「玉掛編み、本カゴ差し、マルエス差しの違いについて」の回答
Q:ワイヤーロープの編み込み方についての質問です。
玉掛編み、本カゴ差し、マルエス差し、これら3通りの編み込み方の違いと強度が知りたいのですが、素人の私にも分かる程度で御回答頂けましたら幸いです。宜しくお願い致します。
A:玉掛索は、安全率(玉掛索の安全率は6倍以上)を守り、正しく使用すれば、ほぼ100%抜けることはありません。
実際に玉掛索の引張試験をした場合、技能士の巧拙とロープ径の大小によって破断荷重にばらつきがでてきます。
上:初心者による加工 下:加工技能士による加工 加工部の長さに注目。
初心者による加工。ストランドが流れ、ロープへの接触面積が小さい。
加工技能士(熟練者)による加工。ストランドがよく締まり、ロープへの接触面積が大きい(=抜けにくい)。
ロープが回転しない状態で玉掛索の引張試験をした場合、「巻差し」のほうが「かご差し」よりもワイヤロープの破断荷重が高くなります。
理由は、「巻差し」のほうが加工部直径とロープ径の断面積の変化が小さくなり、切断部にかかる応力が小さくなるためです。
断面積の違い(イメージ)
①玉掛編み
正式名称は「巻差し」。
他に「219条巻差し」「段落し」「割差し」とも言います。
「巻差し」の呼称は、地方や業種によりさまざまな呼び方がありましたが、昭和52年に全日本ロープ加工組合連合会で「巻差し」に統一しました。
手編み加工では最も一般的な加工方法です。
使用中にロープが回転するような場合は、ロープの撚りが戻って加工部が抜けやすくなるため「かご差し」を選定してください。
○加工方法
ロープのより方向に巻付けるように編み込みます。
スパイキを差す回数が口入れを除けば6回で済むため加工が容易です。
②本カゴ差し
正式名称は「かご差し」。
他に「本さつま」「オーストラリア加工」「オーストラリアンアイ」「豪州差し」とも言います。
使用中にロープが回転して撚りが戻っても加工部が抜けにくいのが特長です。
○加工方法
ロープのよりと反対方向に1超え2差しで編み込みます。
一回差すごとにスパイキをロープから外さなければいけないため加工に時間がかかります。
○加工時間
巻差しを1とした場合、4倍程度。
③マルエス差し
正式名称は「ドイツ差し」。
他に「日鉄差し」とも言います。
日本ではほとんど使用されません。
加工の効果としては、かご差しと同様の効果があると思われます。
○加工方法
かご差しと差し込み方向が逆で、ロープのより方向に1超え2差しで編み込みます。
○加工時間
巻差しを1とした場合、4倍程度。